『新そば』のポスターがそば屋さんで目につくこの頃です。今年採れたソバを挽いて打ったそばのことで、新米と同様に反射的に味覚神経が興奮する人が多いと思います。しかし、そばは加工食品で、その内情は複雑です。生麺と乾麺のそばを製造する私どもも、自家製粉等で実情がだんだんはっきりとわかってくると、お客様にどう説明したら理解していただけるのかと悩んでしまいます。一般論的になりますが、まずは現状を正直に説明し、私どもの方針を示していくしかないと考えます。
[新そばの原点]
自分の畑で収穫したソバを石臼で製粉し、そのまま100%そば粉だけを湧き水で心を込めて手打ちにした、取り立て・打ち立てのそば。
[玄ソバ(ソバの実)事情]
国内産のソバは、普通9から11月に新物が出回ります。中国産などのも近年早めに入荷するようになって、11月中には手に入るようです。各産地別の新ソバの違いがどれほどのものかは、??。輸入物の品質向上も大きく、10年前の常識が通じないことは確かなようです。
冷蔵倉庫による貯蔵と運搬のスピードアップ、コンテナー化が昔の常識を変えています。
古そばも結構うまい。
[製粉所の事情]
前年産の在庫をどこでも持っています。困った事に、そばの需要期は6~8月で、9~10月には逆に極端にヒマになるので在庫の調整が難しいのです。品切れでお客様に迷惑を掛けないために余分な在庫を持てば、その分新そばへの切り替えが遅くなります。昨年の国内産物は、不作で品薄だったので、今秋は新物の出回りが早いようです。
国内産と外国産のブレンド品のそば粉を製造の場合は、その組み合わせにより、より複雑なことになります。
さらに、挽き方と取り分け方によって、同じ原料でも大きな違いが出てきます。
[製麺所の事情]
生そば・干しそば・ゆでそば・冷凍そば等、その種類によって、新そばのこだわり度は違います。
生そばは、そば粉に小麦粉をブレンドして作るので、その割合が一番の問題です。それに賞味期間を何日とするかが、絡んできます。数日たっても違いが分かる新そばを作るのは難しい問題です。
干しそばは生そばの課題に加えて、その乾燥工程が新そばの難題です。その大切な香りが、何時間もかかる作業で水分の蒸発と共に飛んでいってしまうからです。甘味のある新そばの味を大切にするしかありません。製造法による差が大きく出てきます。
以上の差異を組み合わせれば、まさに『オラガソバ』のそば談義に花が咲くのもうなずけると思います。
[あがぁしゃぇ26号 平成11年10月 玉谷信義]